


CBC株式会社は、1925年創業の専門商社として、化学品、電子材料、医薬品、自動車関連、食品、産業光学など多岐にわたる事業を国内外15カ国以上に展開しています。
同社では現在、全社的に基幹システムの刷新を軸に、各業務データの経営資源化を目指した取り組みを推進しています。経営陣からは、特に人事領域においてBCP対策の一環としてのSaaS系システムへの移行や、人事システム(HR側)のコスト削減・業務全般の改善が喫緊の課題として示されており、これらの重要テーマの解決に向けた検討が、基幹システム刷新プロジェクトのスタートと重なる形で始動しました。
刷新の背景には、CBCが長年大切にしてきた「共存共栄」の理念があります。「会社の発展と社員とその家族の幸せを両立させる」という経営方針のもと、CBCでは一貫して「頑張っている人が報われるように」という姿勢を大切にしてきました。例えば、制度変更のたびに公平性を考慮した対応を行うなど、社員一人ひとりに向き合う丁寧な運用がなされてきました。
一方で、事業の多様化や働き方の変化、各種制度改定に対応する中で、雇用形態や給与計算ロジックも段階的に整備・変更されてきました。その結果、長年運用してきた従来システムにはたび重なる改修が積み重なり、構造は複雑化していきました。こうした状況を受け、CBCでは2019年に一度、統合型ERPシステムへ移行し、人事・給与・勤怠を一つの基盤に集約することで効率化を図りました。
しかし、その後の運用を通じて、統合型ERPシステムでも解決しきれない課題が見えてきました。こうした経験を踏まえ、CBCでは改めて次の人事基盤のあり方を見直すことになりました。

特に現場の負担を大きくしていたのが、複雑な操作性と分断されたデータ運用でした。
現場からは、「システムとして構造がかなり複雑であるため、操作がとても難しかったです。メニュー名を読んでも、どのように操作するべきかが分かりませんでした。」という声も上がっていたといいます。
操作項目が多く、画面構成も複雑だったため、システムを使いこなすには一定の時間と経験が必要でした。ひとつの処理を完了するためにメニューを10回以上操作する必要があり、それぞれの手順を覚えないと業務が回らない状況でした。そのため業務は担当者の知識や経験に依存しやすく、標準化が難しい状況となっていました。
さらに、人事・給与・勤怠のデータが別々のシステムで管理されていたことも、現場の負荷を大きくしていました。データ連携にはExcelを使った加工や反映作業が必要で、手作業が日常的に発生していたのです。
特に海外駐在員に関する給与計算は負担が大きく、国外特有の税金計算や社会保険のルールを一件ずつ確認し、税理士・社労士への照会を繰り返しながら処理していました。社員の約8人に1人が海外駐在員という比率は、同規模の企業の中でもかなり高い水準です。
こうした運用は、制度の複雑化とシステムの制約が積み重なった結果として生じたものであり、現場の大きな負担と業務の属人化を招いていました。だからこそCBCでは、単なるシステム更新ではなく、将来を見据えた人事基盤そのものの見直しが必要だと判断したのです。

こうした課題を解決するため、CBCでは次の人事給与システムの選定を進めました。
その際に踏まえられたのが、2019年に導入した統合型ERPシステムの運用経験です。当時は、人事・給与・勤怠などを一つのシステムに集約することで効率化を図るという考えのもと、統合型の構成を採用していました。
一方で、その運用を通じて、統合型ERPだけでは解決しきれない点も見えてきました。制度変更や機能改修のたびにシステム会社への依頼が必要となり、対応に時間を要するケースがあったほか、継続的なコスト負担も発生していました。さらに、同一ベンダーのシステムであっても、勤怠やワークフローとの連携が必ずしもスムーズとは限らず、「統合していればすべてが解決するわけではない」という実感もあったといいます。加えて、オンプレミス環境での運用は、サイバーセキュリティやBCPの面でも課題を抱えていました。
実際にCBCでは、サイバーアタックを受け、人事システムをしばらく使用できない期間が発生しました。幸い給与計算の時期とは重ならなかったものの、「もし給与計算作業の時期と重なっていたら、完全にお手上げだった」と担当者は振り返ります。この経験が、オンプレミス環境からの脱却を後押しする大きな契機となりました。
こうした経験から、次の人事基盤に求められたのはスピードに加えて「柔軟性」「連携性」「検索性」でした。
そこで候補に挙がったのが、HR共創プラットフォーム「PathosLogos」です。「PathosLogos」は、各領域に特化した複数のHR SaaSをつなぎ、人事データの分断や二重管理を解消できる人事基盤です。
CBCでは、給与計算にはパトスロゴスの人事給与SaaS「Combosite人事給与」、勤怠や労務にはそれぞれの分野に特化したHR SaaSを採用し、これらを「PathosLogos」上で連携させる構成を採用しました。
評価されたのは機能性とコストのバランスでした。15年間の総コスト試算では、統合型ERPと比較して約25%のコスト削減が見込まれたことも、大きな判断材料になりました。
最後の後押しとなったのが、CBCの企業文化です。同社の名刺には「GRIT(やり抜く力)」という言葉が刻まれており、チャレンジ精神とやり抜く意志は、CBCのDNAともいえます。従来の仕組みを踏襲するのではなく、新たなアーキテクチャに挑戦することで、将来に向けた人事基盤を構築する。そうした判断のもと、HR共創プラットフォーム「PathosLogos」の導入が進められました。
導入検討当初、CBC社内には、過去のシステム連携の経験から実現性への不安がありました。
その不安を解消するうえで大きかったのが、パトスロゴスの伴走でした。検証環境を用意したうえで、機能や連携の仕組みを丁寧に説明するなど、現場が納得できる形で理解が深まっていきました。
プロジェクトでは、CBC特有の業務要件にも柔軟に対応する必要がありました。たとえば海外駐在員に関する処理など、個別性の高い運用にも対応できるかが検討ポイントとなりましたが、実際にはこうした要件に応じた機能開発や改善が迅速に進められ、現場の安心感につながっていきました。
こうしてプロジェクトは、ベンダーとユーザーという関係を超え、両社が二人三脚で進める「共創」の取り組みとして形になっていきました。
担当者は「一緒に成長したという実感がある。要望を伝えると対応してくれることが本当に多かった。初めての給与データを送信するときは 『待機しています』と言ってくださるなど、導入支援チームのサポートは手厚かった」と語ります。
人事・給与・勤怠のデータが連携されたことで、入社・異動・退職といった社員ライフサイクル全体の情報を一元的に把握できるようになりました。新システムの稼働開始からわずか1カ月で、その効果は明確に表れました。従来10ステップ以上を要していた給与計算の登録作業が5ステップ以下に削減され、担当者の作業負担も大幅に軽減されました。「以前のシステムでは、メニューを選んで、ボタンを押して、入力して、登録して......と10回以上の操作が必要でした。それが今は5回以下。どこを触るとどうなるか、直感的にわかるようになったのが一番大きい」と担当者は語ります。
進捗状況の可視化も進み、クラウド環境への移行により、BCP対策やセキュリティ面でも大きく改善されました。

今回のシステム刷新は、CBCにとって人事DXのスタート地点です。
統合された人事・給与・勤怠データを活用することで、今後はタレントマネジメントやスキル分析、配置最適化、さらには健康経営データとの連携といった領域への展開も期待されています。現場でも、人事施策の効果や適性をより正確に判断できるようになるという期待が高まっています。
「導入を決めてよかった。後悔はしないと思います」― 担当者のこの言葉は、単なるシステム導入の感想ではなく、「GRIT」の精神でやり抜いた先にある確信です。
人とデータをつなぐ基盤を整えることは、CBCの次の100年を支える土台をつくることでもあります。新たな人事DXは、いまここから始まっています。